こころを強くして不登校、ひきこもりを克服するための栄養療法

不登校・ひきこもりを克服するための栄養療法 [Page4/5]

法政大学教授 宮川路子

5.こころを強くして不登校、ひきこもりを克服するための栄養療法

ポイント

1)食事では、糖質をできるだけ控えて、タンパク質、脂質をしっかり摂りましょう。

2)サプリメントでビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、鉄、マグネシウム、亜鉛を摂取してください。タンパク質はプロテインで補うと良いでしょう。

3)腸内環境を整えるためにヨーグルトを食べて、さらにプロバイオティクスも利用しましょう。

1.糖質を控える

糖質は脳神経にダメージを与えます。甘いもの、スナック類などはもちろんのこと、白米、パン、麺類も避けるようにしましょう。ご飯は玄米、パンは全粒粉の茶色いパンを選びましょう。ジャンクフードを食べないように心がけて、間食は最強のおやつである「小魚&ナッツ」にしましょう。

2.タンパク質

タンパク質は神経伝達物質の原料です。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質は情動、気分に関わっています。タンパク質が足りないと、これらの神経伝達物質が足りなくなり、精神的に不安定になるのです。
こころを穏やかに保つためにはタンパク質が必要です。
また、免疫細胞もタンパク質でできていますから、免疫力も低下します。

プロテインは、人工甘味料の入っていないホエイプロテインがおすすめです。けれども、プロテインの味がどうしても苦手、というお子さんが結構多いようです。その場合、私はミルキー味のホエイプロテインを少しだけ混ぜて頂くことをおすすめしています。お子さんはみなミルキーが大好きですので、少し味が入るだけでしっかりとプロテインを摂れるようになります。

3.ビタミンB1

ビタミンB1は活動のためのエネルギーを作り出すために重要なビタミンです。
ビタミンB1不足により、一番に起こるのはエネルギーの不足です。
疲れやすく、だるくなり、食欲がなくなったり、朝起きられなくなったりします。
また、糖質を摂りすぎるとビタミンB1が大量に消費されて、欠乏症を起こします。また、ビタミンB1不足は神経伝達速度(神経の中を興奮が伝わる速さ)が遅くなり、すべての感覚が鈍くなります。

4.ビタミンB3(ナイアシン・ナイアシンアミド)

ナイアシンはペラグラの特効薬ですが、うつ、不安症などの精神疾患の治療にも効果を発揮します。ナイアシンが足りないとセロトニンを作り出すトリプトファンが欠乏するため、精神的に不安定となるのです。睡眠を安定させる効果もありますので、こころが弱っている方にはとてもおすすめです。

5.ビタミンB6

アミノ酸の代謝、ビタミンB1同様神経伝達物質の合成、赤血球の合成などに関わっているため、不足すると、精神的に不安定になったり、貧血になったりします。また、トリプトファンからナイアシンを作るときに必要となりますので、ナイアシン不足を引き起こし、これもまた精神不安定な状況を作り出します。

6.ビタミンC

ビタミンCは皮膚、骨などのコラーゲンの生成に必要です。ビタミンCが足りないと組織がもろくなります。血管壁が弱くなって出血が起きます。これが壊血病といわれる、ビタミンC不足で起こる病気です。また、ビタミンCは強力な抗酸化物質です。ストレスに耐えるために重要で、免疫力を強める働きを持っています。健康の維持のために必須です。またストレスがかかるとビタミンC濃度が低下しますので、たくさん摂取しなければいけません。ビタミンCには鉄の吸収を助ける働きもあります。

7.ビタミンD

私はずいぶん前から、ひきこもりの人にビタミンDが効果があるのではないかと考えています。
現在、ひきこもりが長期化して何十年もひきこもったままになっているというケースが大幅に増えているそうです。若年者のひきこもり数よりも中高年のひきこもりの数のほうが多くなっているというニュースが最近流れていました。
不登校やひきこもりが長期化する原因として、ビタミンDの不足があるのではないかと考えています。

ひきこもると外に出かけないため、太陽に当たりませんから、ビタミンDが体内で作られないため、不足してしまいます。食事から摂れるといっても、十分なほどのビタミンDが摂れるような魚たっぷりの食事ができるとは思えません。多くは炭水化物中心の食事になります。もちろん、ビタミンDだけではなく、タンパク質やほかのビタミン類、ミネラルなども不足しているはずです。

精神疾患の患者はビタミンDの血中濃度が低いことが知られています(7,8)。精神を病んでしまうとますますひきこもりから抜け出ることができなくなります。肉体労働の人には精神を病む人が少ないというのは常識です。太陽に当たって、汗をたらしながら身体を動かすと心も身体も健全に保つことができるのです。
ひきこもりの方にはビタミンDを含むサプリメントを摂ってみることをお勧めしたいと考えています。

8.ビタミンE

ビタミンEは生体膜の機能を正常に保つ働きをしています。細胞膜や血管壁を健康に保ち、赤血球の溶結を防ぎます。また、強い抗酸化作用があります。

9.鉄

鉄は酸素を運ぶヘモグロビンの材料です。鉄不足では酸素が足りなくなって細胞がエネルギーを作り出すことができません。そして神経伝達物質の正常な働きを助ける役割も果たしています。ですから、鉄が不足するとエネルギー不足、うつ状態になってしまいます。そして、鉄の吸収を助けるためにビタミンCが必要です。

10.マグネシウム

マグネシウムは多くの生体反応の補酵素となります。ビタミンB1の代謝、セロトニン合成にも必要です。

11.亜鉛

亜鉛は数百におよぶ酵素を作るために必要です。そのため、体内の多くの反応において重要な役割を果たしています。アミノ酸からたんぱく質を合成したり、DNAの合成にも関与しています。欠乏すると味覚障害が起きることがよく知られています。

12.腸内細菌を整える

腸内細菌は精神と強い関係を持つことがわかってきています。テスト前など緊張するときにお腹が痛くなる、学校に行きたくないと朝下痢をする、というのは精神と腸の密接な関係を表しているのです。

このため、腸を健康に整えると精神が安定します。ヨーグルトを食べるのもお勧めですが、それだけではなく、プロバイオティクス(乳酸菌製剤など)を積極的に活用してください。

13.睡眠障害・不眠症対策のビタミン剤・アミノ酸

健全なこころの維持には質の高い睡眠が必須です。布団に入ってもなかなか寝付けない、寝ても途中で何回も起きてしまうなどの睡眠障害が続いて、朝起きられなくなり、その結果として不登校、ひきこもりになる人が多くいます。また、こころを病んで精神科にかかる人の多くは眠れないという症状も訴えるため、睡眠薬が処方されます。

実は、この睡眠障害も栄養療法で改善する可能性があるのです。睡眠薬に頼らずにビタミンとアミノ酸で眠りの質を上げることができるのです。それが、ビタミンB3(ナイアシン)とビタミンD、そしてグリシンです。

ナイアシンによる睡眠改善効果は、ナイアシンが十分にあるとトリプトファンが増加し、トリプトファンからセロトニン、そしてメラトニンが作られることによります。メラトニンは睡眠ホルモンと呼ばれているもので、睡眠を安定させる効果を持っています。さらにナイアシンは血管拡張作用がありますので、深部体温を低下させる効果もあります。ですからナイアシンが不足すると、寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が低下してしまうのです。

ビタミンDについても、睡眠障害に効果があるということが多くの研究によって示されています。

ビタミンDのレベルを60〜80ng-mlに保つと睡眠が改善し(9)、ビタミンDのレベルが低いと日中の眠気の頻度が上がることが観察されています(10)。
米国の退役軍人における研究では、慢性疼痛を訴える患者にビタミンDを投与したところ、疼痛、睡眠、生活の質(QOL)のすべてが改善したと報告されました(11)。また、68歳以上の男性約3000人を対象にして血清ビタミンD濃度と睡眠について調査を行った研究では、ビタミンDの濃度が低いと睡眠時間が短く、睡眠効率も悪いことが報告されました(12)。
睡眠を調整する脳幹部にはビタミンDの受容体があることも示されています(13)。

グリシンはアミノ酸の1種です。体内でも合成されます。グリシンは血管拡張作用があり、睡眠前に摂取すると効果的に放熱して深部体温を下げて眠りに入りやすくする働きをします。また、グリシンの持つノンレム睡眠誘導効果が熟睡のために必要とされています。

栄養療法についての情報発信を次のサイトで行っています。ぜひご覧ください。

こころと身体の栄養療法

こころと身体の栄養療法

はじめまして。予防医学、栄養医学を専門としております法政大学の宮川路子です。 私は高校生のとき、父のがん闘病をきっかけに医師を志しました。 医学部を卒業した後、大学院で病気の原因を探る疫学について学び、生活習慣病の原因を明らかにし、リスクを乗り除くことで病気を防いでいく予防医学を専門としてきました。 …