不登校・ひきこもりを克服するための栄養療法

不登校・ひきこもりを克服するための栄養療法

法政大学教授 宮川路子  

1.はじめに

  現在、我が国ではいじめや暴力行為、不登校の件数が大幅に増加しています。件数の増加だけではなく、いじめにおいては心身に大きな被害を受ける「重大事態」が増加し、不登校では数の増加と期間の長期化も認めています。若い年代から何十年もひきこもりが続き、40代、50代以上の中高年のひきこもり数も増えつつあり、非常事態であると考えられています。

  私は今まで、産業医、大学教員としてメンタル不調の社員への対応だけでなく、不登校になったお子さん、ひきこもりの生徒、大学生など、幅広い年代の方への対応を数多く行ってきました。不登校、ひきこもりの年齢、期間、原因はさまざまですが、共通して感じることは“栄養不良の実態が背景に隠されている”ということです。

先進国の日本において栄養不良などあるはずがない、と思われるかもしれません。ですが実際に食事からの栄養だけではかなり偏りが生じ、バランスが崩れ、その影響で体調不良をきたしている人がとても多いのが現状なのです。

元気よく留学に出かけて行った大学生が現地で体調を崩したり、一人暮らしを始めた大学生、新入社員がしばらくして不調となったりすることがありますが、その原因が栄養不良であることも多く認められます。

ですから逆に栄養状態が良くなると嘘のように元気になって外に出ていけるようになることも多いのです。

  不登校やひきこもり、メンタルの不調のきっかけとして、何らかのストレス、たとえば、けが、病気(本人または家族)、いじめなどがあるのですが、それに加えて栄養不良があると、事態が深刻化、長期化する傾向があるように感じています。あるいはまったく思い当たるようなきっかけがなくても、何となく体調不良になってしまい、外に出られなくなっているケースもあります。

多いのは、

「朝だるくて起きられなくなってしまった」

というものです。

このようなケースでは、内科にかかっても目立った異常が見つかりませんので、起立性調整津障害(OD)、起立性低血圧などという病名がつきます。ですが、そこで栄養療法を勧められることはまずほとんどありません。

あまりにもよくならないと、「精神的なものでしょう」、ということで精神科受診を勧められることになります。

精神科では「自律神経失調症」という診断で、抗うつ薬などが処方されます。けれども、精神科にかかってカウンセリングを受けたり、薬をのんだりしてもまったくよくならないケースがほとんどなのです。薬はあくまでも対症療法(病気の原因の治療ではなく、その時の症状を抑えるための治療)ですから根本的な解決にはなりません。

不登校が長期化すると社会に出ることなく何十年もひきこもることになりかねないのです。こういった状態から抜け出すためには、ただ現状を維持し、見守っているだけではいけません。

「学校に行けないのなら、とりあえず休んで自宅でのんびりして様子をみましょう」

というだけでは元気になれることはまずないでしょう。

私は、この解決策は栄養にあると考えています。栄養状態が人のこころの健康に大きい影響を与えるためです。

栄養療法についての情報発信を次のサイトで行っています。ぜひご覧ください。

こころと身体の栄養療法

こころと身体の栄養療法

はじめまして。予防医学、栄養医学を専門としております法政大学の宮川路子です。 私は高校生のとき、父のがん闘病をきっかけに医師を志しました。 医学部を卒業した後、大学院で病気の原因を探る疫学について学び、生活習慣病の原因を明らかにし、リスクを乗り除くことで病気を防いでいく予防医学を専門としてきました。 …